ロサンゼルスと聞くと、多くの人が美しいビーチやにぎやかなハリウッドの街並みを思い浮かべるかもしれません。
しかし、毎年のように報道される山火事のニュースも、ロサンゼルスを含むカリフォルニア州の大きな課題の一つです。
さらに2025年に入り、ロサンゼルスで山火事が起こり甚大の被害が報告されている状態です。
なぜこの地域では山火事が頻繁に発生するのでしょうか。
本記事では、その主な原因を分かりやすく解説していきます。
ロサンゼルスで山火事が起こる原因とは
ロサンゼルスの気候と地形の特徴
ロサンゼルスは温暖な地中海性気候に属しており、雨の少ない長い乾期が特徴です。
冬から春にかけて多少の雨は降りますが、夏から秋にかけては乾燥が進み、気温も高くなるため自然発火や火の不始末による火災リスクが高まります。
また、ロサンゼルスは海と山に囲まれた地形で、内陸部から海岸線にかけて急峻な丘陵地帯が広がっています。
こうした地形のため、山火事がいったん起こると短い時間で燃え広がりやすいのです。
さらに、標高や地形の違いによって局地的な風の流れが発生しやすくなります。
山あいを吹き抜ける風は、火災が起きたときに炎を勢いづけ、消火活動を困難にする要因の一つとなっています。
サンタアナ風の影響
ロサンゼルス周辺の山火事にとって見過ごせないのが、秋から冬にかけて吹く「サンタアナ風」です。
サンタアナ風は内陸の砂漠地帯から海に向かって吹き下りる乾燥した風で、その風速は時にハリケーン並みの強さに達することもあります。
もともと乾燥した空気が山を越える過程でさらに水分を失い、高温かつ低湿度という燃えやすい環境をもたらします。
強い風は火の粉を遠くまで運ぶだけでなく、新たに別の場所に火種をばらまくため、消火が追いつかないほど短時間で火事が拡大する場合があります。
また、風上から大量の火の粉が飛んでくると、予想外の場所で出火する「スポット火災」が発生し、被害範囲が一気に広がるのです。
乾燥した植生と人間活動
カリフォルニア州の多くの土地には、チャパラル(Chaparral)と呼ばれる乾燥に強い低木や草が広がっています。
これらの植生は長い乾期の間に湿度を失い、夏から秋にかけては火がつきやすい状態となります。
さらに、落ち葉や枯れた草木が地表を覆うと、火の燃料が豊富にあることになり、ひとたび火災が起こると一気に拡大してしまいます。
また、人間による開発やレクリエーション活動が山火事を誘発するリスクも高めています。
たとえば、庭先でのバーベキューの火の不始末、タバコのポイ捨て、電線のトラブルなど、ちょっとした不注意が大規模火災に繋がることがあるのです。
地域住民が自然保護区域や山間部付近に多く住むようになったことで、住宅地と森林の境界が曖昧になり、山火事と生活圏が直接接する機会も増えています。
気候変動がもたらす影響
近年、地球温暖化による気候変動もカリフォルニア州の山火事多発を後押ししている要因と考えられています。
温暖化によって気温が上昇すると、土壌や植生からの水分が一層奪われ、山火事が起こりやすい状態になります。
また、雨量の変動が激しくなることで、特定の年には極端に少雨となり、植物の乾燥が深刻化するのです。
その一方で、気候変動は集中豪雨をもたらす場合もあります。
集中豪雨によって山肌が緩み、土砂崩れが起きやすくなり、火災後の土地保全をさらに困難にするケースもあります。
火災のあと地表を覆う植生が焼失していると、雨水を吸収できずに急速に地表を流れ、洪水や土砂崩れにつながるなど、二次災害が発生するリスクが高まります。
消防・行政の取り組みと課題
ロサンゼルス郡やカリフォルニア州の消防当局は、ヘリコプターや飛行機を利用した空中消火や、事前の火除け地帯の設置、住民への避難勧告の早期発令など、さまざまな対策を講じています。
特に、乾燥シーズンに入る前には住民に向けて防火対策の啓蒙を行い、庭先や敷地内の枯れ草や落ち葉の除去を奨励するなど、火災予防の意識を高める取り組みも活発です。
しかし、気候変動による極端な気象条件や、人口増加による都市拡大によって、火災リスクは年々高まりつつあります。
限られた消防資源や予算の中で、どのように最適な消火作戦を展開するかが大きな課題となっています。
また、複雑な地形や広大な燃えやすい植生帯に加え、強風に伴う火災の拡散は依然として消防活動を難しくする要因です。