好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)は、副鼻腔炎の中でもアレルギーや自己免疫の働きが関わりやすいと考えられているタイプの慢性副鼻腔炎です。
好酸球が増殖することで鼻粘膜が刺激され、鼻づまりや鼻水、後鼻漏(こうびろう)、頭痛などの症状が慢性的に続くことが特徴です。
治療には、ステロイドや手術などが用いられますが、日々の生活習慣、特に食事内容を見直すことも、症状の改善や再発予防に大きく寄与すると言われています。
本記事では、好酸球性副鼻腔炎の症状を和らげる可能性があると考えられる食べ物や食生活の工夫を、いくつかの視点からご紹介します。
ただし、あくまでも一般的な情報であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
持病やアレルギー、個別の体質などをお持ちの方は、必ず医師や管理栄養士にご相談のうえ、ご自身に合った方法を検討してください。
好酸球性副鼻腔炎と炎症の関係
好酸球性副鼻腔炎は、名前のとおり好酸球という免疫細胞が増殖し、炎症を起こすことで鼻粘膜に影響が及ぶ病気です。
炎症は身体が刺激から身を守るための防御反応ですが、過剰に起こることで逆に組織を傷める原因ともなります。
したがって、この「過剰な炎症」をいかにコントロールするかが、症状の緩和や慢性化予防のポイントになります。
炎症を抑える鍵の一つに「抗炎症作用(こうえんしょうさよう)」が挙げられます。
食事には抗炎症作用を持つ栄養素を摂取する方法があるため、好酸球性副鼻腔炎の症状緩和の手助けとなる可能性があります。
また、食物アレルギーの有無も副鼻腔炎を悪化させる一因になり得るため、自分がどのような食品にアレルギー反応を起こしやすいのかを知ることも大切です。
抗炎症作用が期待できる食材
1. 青魚(サバ・イワシ・サンマなど)
青魚にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といったオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれています。
オメガ3系脂肪酸には抗炎症作用があるとされており、体内における炎症反応を緩和するのに役立つと考えられます。
好酸球性副鼻腔炎は粘膜の炎症が慢性化しているため、これらの脂肪酸を意識して摂取することで、症状が軽減する可能性があります。
- 食べ方の工夫
- 焼き魚や煮魚だけでなく、缶詰なども利用して手軽に取り入れる。
- 青魚特有の臭みが気になる場合は、ショウガやネギなどの香味野菜と一緒に調理すると食べやすい。
2. 亜麻仁油・えごま油
青魚と同様、亜麻仁油やえごま油にはオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸が含まれています。
熱に弱いため、高温での調理には向きませんが、サラダのドレッシングとしてかけたり、仕上げに少量を垂らすなどの方法で摂取するとよいでしょう。
日常の中で手軽に抗炎症作用を得やすい食材と言えます。
3. ターメリックやショウガなどの香辛料
- ターメリック(ウコン)
ターメリックに含まれるクルクミンには、抗酸化作用や抗炎症作用があると言われています。カレー粉の主成分でもあるため、普段の料理に取り入れやすいスパイスです。 - ショウガ
ショウガにはショウガオールやジンゲロールといった成分が含まれ、これらが抗炎症作用を示す可能性があります。また血行促進効果も期待できるため、身体の巡りを整えるサポートとして取り入れる価値があります。
4. 緑黄色野菜や果物
ビタミンやミネラルが豊富に含まれる緑黄色野菜や果物も、抗炎症作用や免疫調整をサポートする可能性があります。
特にビタミンCやビタミンE、ポリフェノール類などは抗酸化作用があり、炎症の原因となる活性酸素を抑制する効果が期待されます。
- おすすめの野菜・果物例
- ブロッコリー、ホウレンソウ、ニンジン、カボチャ、パプリカなど
- ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー、イチゴなど)、柑橘系の果物、キウイなど
腸内環境を整える食材
好酸球性副鼻腔炎は免疫バランスの乱れが原因となることが多いと考えられており、腸内環境を整えることが重要とされています。
腸には体内の免疫細胞の多くが存在しているため、腸内環境が乱れると免疫が過剰に反応しやすくなり、アレルギー症状や副鼻腔炎の悪化につながる可能性があります。
そこで、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やすような食品を積極的に取り入れることが効果的とされています。
1. 発酵食品(ヨーグルト・納豆・キムチなど)
- ヨーグルト
乳酸菌やビフィズス菌が豊富で、腸内環境を整えるのに役立ちます。好酸球性副鼻腔炎を含むアレルギー性疾患の予防・改善の一端を担う可能性があると言われています。ただし、牛乳由来のたんぱく質にアレルギーがある方は注意が必要です。 - 納豆
納豆菌による発酵食品であり、植物性たんぱく質や食物繊維も豊富です。腸内の善玉菌をサポートし、免疫バランスを整える助けになります。 - キムチ・漬物
発酵が進んだキムチや漬物にも乳酸菌が含まれる場合があります。ただし、辛味が強いキムチは刺激が強いので、体質によっては胃腸を荒らす可能性もあります。適量を守り、症状を見ながら調整しましょう。
2. 食物繊維を多く含む食品
全粒穀物(玄米や全粒粉パンなど)、豆類(大豆、レンズ豆、ひよこ豆など)、野菜、果物などは食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境の改善に役立ちます。
とくに水溶性食物繊維を多く含むオーツ麦(オートミール)やゴボウ、果物類は、善玉菌の増殖をサポートすると言われています。
抗酸化作用が期待できる食品
炎症反応は、活性酸素の増加とも深く関わっています。
活性酸素の増加は組織を傷め、炎症を悪化させる可能性があります。
そこで、抗酸化作用を持つ栄養素を摂取することが、好酸球性副鼻腔炎のような慢性炎症をコントロールする上で有効とされています。
1. ベリー類
ブルーベリー、ブラックベリー、ストロベリーなどのベリー類には、ポリフェノールの一種であるアントシアニンやビタミンCなどの抗酸化物質が豊富です。これらは活性酸素を除去し、炎症を軽減する可能性があります。
2. ナッツ類
アーモンド、くるみ、ピスタチオなどのナッツには、ビタミンEや良質な脂質が多く含まれます。ビタミンEは抗酸化ビタミンとして知られ、オメガ3系脂肪酸を含むくるみもおすすめです。ただしカロリーが高いため、食べ過ぎには注意が必要です。
3. 緑茶
緑茶に含まれるカテキン(エピガロカテキンガレートなど)は、強い抗酸化作用を持ちます。
炎症やアレルギー反応を抑制する効果が期待されるため、日常的に緑茶を飲む習慣を取り入れてみるのもよいでしょう。
カフェインの摂取制限が必要な方は、飲む量や時間帯に注意してください。
食事以外で気をつけたいポイント
好酸球性副鼻腔炎の症状を改善させるためには、食事だけでなく生活習慣全体に気を配る必要があります。
特に、以下のポイントを意識すると相乗効果が期待できます。
1. 規則正しい生活
睡眠不足は免疫システムを乱し、炎症やアレルギー反応を悪化させる一因になります。
毎日同じ時間に寝起きする、十分な睡眠時間を確保するなど、規則正しい生活を心がけましょう。
2. ストレス管理
ストレス過多も免疫バランスを崩し、好酸球性副鼻腔炎の症状を悪化させる可能性があります。
適度な運動や深呼吸、趣味の時間を作るなど、ストレスを発散できる方法を見つけると良いでしょう。
3. 適度な運動
ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなどの有酸素運動は血行促進を促し、身体の免疫バランスを整えるのに役立ちます。
過度な運動は逆に体を疲弊させ、炎症を強める恐れがあるため、無理のない範囲で定期的に続けることが大切です。
食事の組み立て方の例
好酸球性副鼻腔炎の対策として、ここまで紹介した食品をどのように日々のメニューに組み込むか、例を挙げてみましょう。
- 朝食
- オートミールにヨーグルトを添え、ベリー類(ブルーベリー、イチゴなど)とハチミツを少量かける。
- または、亜麻仁油やえごま油を仕上げに垂らした野菜スープと全粒粉トースト。
- 昼食
- 青魚(サバ)の塩焼き定食で、副菜に納豆や発酵食品の漬物を加える。
- サラダにはブロッコリーやパプリカなどの緑黄色野菜をたっぷり使用し、ドレッシングにえごま油を活用する。
- 夕食
- ターメリックを使ったカレーライス(ルウのカレーではなくスパイスカレーならより抗炎症効果が期待できる)。玄米を合わせると食物繊維も同時に摂れる。
- 魚料理の日が続いたら、鶏肉をショウガと一緒に煮込む生姜煮などでたんぱく質を補う。
- 間食・おやつ
- 緑茶を飲みながらナッツ(くるみ、アーモンド)を適量かじる。
- フルーツを使ったスムージーでビタミンや抗酸化成分を補給。
注意点とまとめ
- 個人差を考慮する
好酸球性副鼻腔炎の原因や症状には個人差があり、アレルギーや合併症の有無、体質によっても合う食事・合わない食事が変わってきます。食材によってはアレルゲンとなる場合もあるため、新たに食材を取り入れる際は注意し、気になる症状がある場合は医師や管理栄養士に相談しましょう。 - バランスの良い食事を心がける
特定の食品だけに偏るのではなく、主食・主菜・副菜をバランスよく摂取することが大切です。偏食が続くと栄養不足や逆に栄養過多になるリスクが高まり、免疫バランスを崩す要因にもなります。 - 無理なく続けられる方法を選ぶ
食事療法は長期的な視点で取り組む必要があります。急に大幅に食生活を変えるとストレスになり、かえって体調を崩したり、挫折してしまう原因になります。まずは少しずつ、できる範囲で取り入れやすいものから試してみましょう。
- 医師の指導を最優先に
好酸球性副鼻腔炎は症状が長期化しやすく、さらに重症化すると副鼻腔内のポリープ切除やステロイド薬などの専門的な治療が必要になる場合があります。自己判断だけで改善を目指すのではなく、医師の指導を仰ぎながら、食事の工夫も並行して行うことが望ましいです。
さいごに
好酸球性副鼻腔炎は、鼻づまりや後鼻漏、嗅覚障害など生活の質を大きく下げる症状が続きやすい厄介な病気ですが、食事や生活習慣を見直すことで、症状の改善や再発リスクの軽減につながる可能性があります。
特に炎症を抑える働きをもつオメガ3系脂肪酸や抗酸化作用を持つビタミン・ポリフェノール、腸内環境を整える善玉菌や食物繊維などを、日常の食生活に意識して取り入れることは非常に有効です。
一方で、どんなに良いと言われる食材でも、個人の体質やアレルギーの有無によっては逆効果になることもあります。
自分の身体の声を聞きながら、医師や管理栄養士と相談しつつ、無理のない範囲で続けられる食事改善を取り入れてみてください。
病院での定期的な検査や治療とあわせて、内側からのケアを行うことで、より快適な生活を目指すことができるでしょう。
皆さんの好酸球性副鼻腔炎が少しでも緩和し、毎日をより元気に過ごせるよう、この記事がお役に立てれば幸いです。