百日せきとは?長く続く咳の正体
百日せき(百日咳)は、「ボーダテラ・パータスィス(Bordetella pertussis)」という細菌によって引き起こされる感染症で、特に子どもや乳児にとって重篤な症状を引き起こす可能性があります。
「百日」とは、咳が非常に長期間続くことから名付けられました。
実際には数週間から3か月以上にわたり、激しい咳が続くこともあります。
咳が連続して起こり、「ヒュー」という笛のような音を伴うことが特徴で、特に夜間に症状が悪化する傾向があります。
成人では症状が軽いため風邪と見間違われることもありますが、乳幼児では命に関わるケースもあります。
百日せきの主な感染経路と潜伏期間
百日せきは、感染者の咳やくしゃみに含まれる飛沫を吸い込むことによって感染します。
いわゆる「飛沫感染」です。
家庭や学校、保育園など、人が集まる場所では特に感染が広まりやすくなります。
潜伏期間は一般的に7日~10日程度で、初期は軽い風邪のような症状(鼻水や微熱、軽い咳)が出ます。
この段階では百日せきとは気づかれにくく、知らぬ間に他者へ感染させてしまうことも少なくありません。
百日せきの症状の経過
百日せきの症状は、以下の3つの段階に分けて進行していきます。
1. カタル期(1~2週間)
風邪に似た症状が出る時期です。くしゃみ、鼻水、微熱、軽い咳などが中心で、この時点では診断が難しいのが現実です。
2. 痙咳期(けいがいき/2~6週間)
百日せき特有の激しい咳が出始める時期です。咳が連続的に起こり、「ヒュー」という音を伴う呼吸や、咳の後に嘔吐することもあります。乳児の場合は「無呼吸発作」などの重篤な症状が出ることがあり、入院が必要になることもあります。
3. 回復期(2週間~数か月)
徐々に咳が軽減していきますが、完全に消えるまでにはかなりの時間を要する場合があります。この間も体力が低下しているため、他の感染症にかかりやすく注意が必要です。
百日せきの治療方法と対策
百日せきは、細菌感染であるため抗菌薬(主にマクロライド系)が効果的です。
カタル期の早期に診断・投薬ができれば、症状の進行を抑えることができます。
しかし、痙咳期以降は抗菌薬による症状の改善はあまり期待できず、治療の中心は「対症療法」となります。
咳止めの薬はあまり効果がなく、むしろ症状を悪化させることもあるため、自己判断で市販薬を使うのは避けましょう。
特に乳児がかかった場合は、すぐに小児科を受診することが大切です。
予防のためにはワクチン接種が重要
百日せきは予防接種によって防ぐことが可能です。
日本では、定期予防接種として「四種混合ワクチン(DPT-IPV)」に百日せきの成分が含まれています。
生後3か月から接種が始まり、数回に分けて免疫をつけていきます。
ただし、ワクチンの効果は年数とともに薄れるため、10代以降の再感染例も見られます。
特に乳児を家庭に迎える予定のある家族は、自身が免疫を持っているか確認し、必要に応じて追加接種を受けることも検討しましょう。
大人も油断できない!家族内感染のリスク
百日せきは子どもの病気と思われがちですが、成人でも感染し、無自覚のまま子どもにうつしてしまうケースが増えています。
特に軽症で済むことが多いため、風邪と見誤って出社や外出を続けてしまい、職場や家庭内に広がってしまうことも。
成人の再感染防止のためにも、ワクチンの再接種や、長引く咳がある場合には早めの受診が求められます。
まとめ:正しい知識で百日せきを防ごう
百日せきは、軽く見られがちな病気ですが、特に乳児や免疫力が低下している人にとっては命に関わる可能性のある深刻な感染症です。
早期の受診と適切な治療、そして何よりワクチンによる予防が重要です。
家族全体で予防意識を高め、特に小さなお子さまがいるご家庭では、家族全員の健康管理が必要です。
長引く咳がある場合には、早めの医療機関受診を心がけましょう。